安全衛生ノート

〜脚立の安全対策(第6回)〜

平成26年10月

労働安全・衛生コンサルタント 土方 伸一

■ 脚立に起因する労働災害の分析(第6回)

今月は脚立にまたがった状態での作業について解析していきます。使用する脚立は、前回同様、通称6尺の脚立です。いくつかの仮定をしながら進めていきます。

図1
図2
 

 

 

 

 

 

 

 


 解析その2 天板に座った状態での作業

1のように、脚立にまたがって、天板に座った状態の作業について考えます。脚立と作業者を一体と考え、前後または左右に外力が加わったときの安定性を解析します。

座った状態における作業者の重心は天板の上部0.3m(床上から2.0m)、水平方向の重心は脚立の中心線上と仮定します。

脚立の重心は、高さ0.85mですから、作業者+脚立の重心は床から1.9mになります。

tanθ1/2×全幅(左右方向の場合は奥行)/重心高さ

となりますので、いつもの式を使って作業者+脚立を動かすために必要な力Fを計算すると下表のとおりです。

 解析その3 脚立の上から2段目にまたがった状態での作業

2のように、脚立の上から2段目の踏みさん上(高さ:1.4m)に立ち上がった状態での作業について解析します。ここでも脚立と作業者は一体と考えます。このときの重心高さは2.3mとなります。その他の条件は解析その2と同じです。結果は表のとおりです。参考として、脚立単体の安定性を解析しました。

 

作業状況

力の方向

tanθ0

θ0

力(F

力の比較

(安定状態を100

天板に座った状態

前後(全幅方向)

0.16

9.3°   

123 N

68

左右(奥行方向)

0.29

16.2°

219 N

121

脚立の上から2段目にまたがった状態

前後

0.14

8.0°

106 N

59

左右

0.25

14.0°

187 N

104

安定状態

左右・前後

0.25

15.0°

180 N

100

脚立単体(参考)

全幅方向

0.36

20.0°

25 N

14

奥行方向

0.65

32.9°

44 N

25

 

 

 

 

 

 

 

結論

@ 脚立は、単体、作業時ともに奥行方向に較べ全幅方向の安定性が低い。

A 天板に座った状態では、前後方向に左右方向の1/2の力で脚立とともに回転します。後方に倒れた場合は、高い確率で後頭部を強打することになる危険な作業方法です。

A 上から2段目の踏みさん上に立ち上がって行う作業については、天板に座って行う作業より小さい力で回転します。座った状態より危険性が高い作業です。

次回は、別の観点から脚立の安定性(不安定性)を解析します。