安全衛生ノート
〜脚立の安全対策(第10回)〜
平成28年2月
労働安全・衛生コンサルタント 土方 伸一
■脚立に起因する労働災害の分析(第10回)
今月は脚立を「ハシゴ」として使用した場合について解析していきます。
使用する脚立は、通称6尺のハシゴ兼用脚立です。
◇解析その1 死亡災害発生状況
平成20年から24年に脚立に起因した死亡災害は64件発生している。そのうち、脚立をハシゴとして使用しているときに発生したものは14件あります。その内訳は次のとおりです。
発生状況 |
件数 |
脚立の脚部が滑った(転移した) |
4件 |
上るとき、または降りるとき |
4件 |
脚立が倒れた |
3件 |
その他 |
3件 |
脚立をハシゴとして使用しているときに発生する災害は、脚部の滑り(転位)によるものと昇降時に多く発生しています。
次に、脚部の滑りの原因と、昇降時に多発する理由を検討していきます。
◇解析その2 ハシゴとして使用した場合に脚立にかかる力の解析
図のように、脚立をハシゴとして、壁に立てかけて使用している場合を考えます。D点の摩擦は無いものとします。
このとき、脚立は床との摩擦力によって自立していることになります。
A点に働く力Fは、作業者の質量をM、脚立の質量をmとすると次の式で表されます。
…… @
FはAC間の距離に比例することになります。
すなわち、作業者がA点からD点に向かって脚立を上っていくと,距離の増加とともにA点に掛かる力が増加し、最大摩擦力を越えた時、脚立は滑って倒れます。脚立が倒れないための条件は、静止摩擦係数を
として、次のようにあらわされます。
…… A
@とAから、脚立が倒れないためのtanθと距離の関係は次のようになります。
…… B
静止摩擦係数は実験的に導き出すしかないので、これ以上の解析はできませんが、これまでの解析結果で、次のことが判明しました。
1)脚立と床の接点に掛かる力Fは、床との角度θが小さいほど大きくなる。(滑りやすくなる。)
2)床との角度θが同じであれば、作業者が高く上るほどはしごと床との接点に加わる力は大きくなる。(滑りやすくなる。)
3)摩擦係数、角度等で決まる一定の高さ以上に上ると、Fは最大摩擦力を超え、ハシゴは倒れる。
脚立の先端に近い位置で、ドリルによる穴開け、荷の受け渡しなどを行った場合、その反力によって、Fが最大摩擦力を超えると、脚部が滑って脚立は倒れます。
ハシゴとして使用しているときの災害が多いのはここに原因があると思われます。
これらの点は、一般のハシゴも同様ですが、脚立では一般のハシゴに比べて、次の欠点があります。
4)ステップの幅が一定でない。
5)折り返し部分は他のステップと状態が異なる。
これらの点が複合的な要因となって、災害が多発していると推測されます。
次回は、これまでの解析結果に基づいて、脚立の安全性のまとめを行います。