安全衛生ノート
〜脚立の安全対策(第4回)〜
平成26年8月
労働安全・衛生コンサルタント 土方 伸一
■脚立に起因する労働災害の分析(第4回)
今月から数回にわたって脚立作業の安定性(不安定性)について解析していきます。
◇安定性の基本的解析
最初に作業者の安定条件について考えていきます。数式の嫌いな方は結論だけ読んでください。
図1 図2
固定された台の上に立っている作業者(体重(質量):W kg)に横方向の力Fが加わった状態(図1)を模式的に表すと図2になります。
Bを中心に、軸BGを回転させようとする力(力のモーメント:N)の解析によって、安定性の評価ができます。力のモーメントNはBGの長さをL、鉛直線とBGの角度をθとして次の式で表されます。(gは重力加速度:9.8m/)
軸BG が回転するためには N>0 が必要です。N≦0では、2本の脚AG、BGに支えられているため回転しません。上の式でN>0 と置くことによって回転するための外力Fの条件が求められます。
tanθの値は図3のようになります。横軸がθ、縦軸がtanθを表しています。
W・gは一定であることから、次のことが判ります。
@ θが小さくなると、Fも小さくなり、θ=0では、F=0になる。
A θ<0では、F<0となる。
結論
θが小さくなると、小さな外力で回転させることができるようになり、θ<0では、F<0となって支える力が働かなければ物体は倒れてしまいます。
θ=0すなわち重心がB点の真上にある時が倒れずに立っていられるバランスの限界になります。
次回は、この結果を使い実際に脚立の上で作業する場合を想定して安定性(不安定性)を解析します。