元労働基準監督官による

事業場の安全衛生管理をめぐる実務上の留意点

と監督署対応

まえがき

インターネットで「労働基準監督署 是正勧告」などの単語で検索すると数多くのページが表示されます。是正勧告や使用停止等命令に対して、どのように対処すれば良いかお困りの方も多いと思います。問題に対処するためには、問題に対する正しい理解が必要です。

労働行政の運営については、多くの統計や資料が公開されています。私は、これらの資料等によって行政の重点事項を理解し、併せて私の労働基準監督官及び労安全衛生コンサルタントとしての経験をお話しすることによって、労働基準行政への理解と労働安全衛生管理の向上を図ることができると考えました。

1 監督官の役割と権限

労働基準監督官(以下「監督官」という。)は、労働基準法第97条によって全国47の労働局、321の労働基準監督署に3,961人(平成24年度)配置されています。労働基準監督署には3,181人が配置されています。

(1)監督官の役割

労働者保護法規には労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法などがあります。監督官制度は、これらの法律と関係政省令の履行確保を図ることを目的に設けられています。

(2)監督官の権限

監督官には法律の施行のための権限(行政官としての権限)と犯罪捜査の権限(司法警察員としての権限)が与えられています。これらの権限は、労働基準法、労働安全衛生法、作業環境測定法、じん肺法など労働基準関係の法律に規定されています。

ア 法律を施行するための権限

法律に規定されている監督官の権限は3つに分けることができます。

(ア)事業場に立ち入るための権限

労働基準法や労働安全衛生法等の履行状況を確認するためには、事業場に立ち入って帳簿や設備等を調査することが必要です。この調査を「臨検監督」と呼んでいます。(労働基準法第101条、労働安全衛生法第91条)

(イ)使用停止等を命令する権限

労働安全衛生法において、労働基準監督署長等は設備等について法違反があるときは、使用停止等の命令を発することができます。急迫した危険がある場合、監督官は署長等の権限を自ら行うことができます。(労働安全衛生法第98条)

(ウ)報告又は出頭に関する権限

監督官は必要と認めるときは、使用者(労働安全衛生法では事業者)又は労働者に報告を求め又は出頭を命令することができます。(労働基準法第104条の2、労働安全衛生法第100条)

イ 犯罪捜査に関する権限

監督官は労働基準法、労働安全衛生法等の違反について、司法警察員として犯罪捜査を行う権限があります。(労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条)

監督官が労働基準法、労働安全衛生法違反などで送検した例は、平成24年で1,133件あります。賃金不払いや法違反によって死亡災害を発生させた事案などがほとんどですが、是正勧告や使用停止命令を守らない場合も送検させることがあります。

2 労働基準監督官による調査

(1)監督官が行う調査の種類

臨検監督は、年間計画に基づいて行われる定期監督、労働災害を発生させた事業場の中から選定される災害時監督、労働者の申告による申告監督、是正確認のための再監督に分かれます。また、死亡災害や重大災害などが発生したときは、原因の究明と再発防止を図るために災害調査を行います。

(2)定期監督等の実施状況と法違反の状況

平成24年1月から12月に実施された定期監督等(定期監督及び災害時監督)の実施件数と法違反の状況のうち、安全衛生関係について抜粋したものを資料1に示します。(厚生労働省労働基準局:平成24年労働基準監督年報)

表を掲載

平成24年は、13万4,295件の定期監督等が実施され、68.4%の事業場に法違反が認められました。

労働安全衛生法関係で違反が多い項目は、安全基準、健康診断、安全衛生管理体制、定期自主検査などです。

これらの法違反が多く指摘されているのは、事業場において違反が多いという事実と同時に、これらの違反が労働災害に直接・間接に関係してくる重要事項であり、監督官の視点がこれらの事項に置かれていることを意味しています。法違反の状況は業種によって異なりますので、事業場の安全衛生担当者等は業種ごとの問題点、すなわち、自分の事業場で何を中心に管理すれば良いかを把握したうえで安全衛生管理を進めていくことが必要です。

3 定期監督の対象選定方法

定期監督の対象はどのような基準で選定されているのでしょうか。

全国の労働基準監督署に配置されている監督官の数は平成24年度で3,181人、年間の定期監督等実施事業場数は13万4,295、それに対し事業場数は427万5,819に達します(平成24年労働基準年報)。全ての事業場を均等に扱っていたのでは、定期監督が一巡するのに約30年かかってしまいます。

これでは法遵守の徹底や、安全衛生水準の向上は期待できませんので、当然のこととして、監督対象の重点化が行われます。重点対象を知ることによって、行政が何を問題視しているかがわかります。事業場として安全衛生水準を向上させるために取り組むべき対象が見えてくることになります。

(1)監督対象重点化の考え方

全国的な方針は、厚生労働省から各年度「地方労働行政運営方針」として公表され、都道府県労働局の方針は「各労働局労働行政運営方針」として公表されています。

労働安全衛生関係では、5年ごとに労働災害防止対策の基本的考え方を示した「労働災害防止計画」が策定・公表されています。現在は「第12次労働災害防止計画(平成25年度から平成29年度まで)(以下「12次防という。」」が推進されています。

(2)12次防の概要

12次防は、労働安全衛生対策全般にわたっていますが、特に目立った点は次のとおりです。

重点業種対策

第三次産業対策

・小売業の大規模店舗・多店舗展開企業を重点として労働災害防止意識を向上させる

・小売業のバックヤードを中心として作業場の安全化を図る

・介護施設における腰痛、転倒防止対策を推進する

健康確保・職業性疾病対策

メンタルヘルス対策

・ストレスチェック等の取組を推進 する

過重労働対策

・時間外労働の限度基準の遵守を図り、時間外労働削減を推進する

化学物質対策

・発がん性に着目した化学物質の有害性評価、評価結果を踏まえた規制を加速する

(3)労働行政運営方針の概要

平成26年度地方労働行政運営方針(概要版)では次の項目が重点施策とされています。

ア 労働条件の確保・改善対策

 _畚渡働による健康障害防止のための監督指導

◆ー禺圓痢峪箸ぜ里董廚疑われる企業等への取り組み

イ 労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり

 ‖荵絢〇唆箸覆匹砲ける労働災害防止対策

◆_蹴慂質による健康障害防止対策

 メンタルヘルス対策

ポイント

過重労働による健康障害防止対策、第三次産業の労働災害防止対策、化学物質による健康障害防止対策、メンタルヘルス対策などは12次防と行政運営方針に共通になっています。これは、中長期的にも、単年度でも労働行政の中心課題であることを示しています。特に、過重労働対策については、行政運営方針で「監督指導」が明確に示されていることに注目する必要があります。

(4)労働基準監督署における監督対象の選定

各労働基準監督署は、労働災害防止計画や都道府県労働局の行政運営方針に基づくほか、管内の業種や遵法水準を考慮して、年間計画を策定し、対象業種等の絞り込みを行い、個別の事業場を選定します。危険機械・有害物の使用状況、過去の法違反の状況等が考慮されます。

4 安全衛生についての労働行政の基本的スタンス

監督官の業務の中心は働く人の労働条件の確保と安全と健康の確保にあります。これは、労働基準法成立時(昭和22年)から変わっていません。安衛法の施行(昭和47年)以降は、安全衛生対策については、その比重が高くなっています。私が労働省(現在の厚生労働省)に入省した当時は、有機溶剤、特定化学物質などに係る職業性疾病防止対策が最重要課題として取り組まれていました。重点課題は時代とともに変化していますが、安全衛生対策は一貫して最重要課題として取り組まれてきました。

一部に、「近年、監督署は安全衛生にも力を入れるようになってきた」という情報もあるようですが、過重労働対策や第三次産業の労働災害防止対策などで、従来は労働条件対策が中心であった事業場に安全衛生関係の指導をする機会が増えたことで、そのような印象を受けるのかもしれません。安全衛生対策は過去も現在も行政の最重要課題として取り組まれています。

5 監督官の調査の進め方及び指導内容

(1)臨検監督の原則

監督官が臨検監督を実施する際の手順について見てみましょう。臨検監督には、いくつかの原則があります。

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事業場を適切に指導するためには、事業場の労働条件や安全衛生管理の実態をありのままに把握することが不可欠です。そのため、臨検監督は原則として予告なしに行われます。例外として、出頭通知による呼び出し監督が行われることもありますが、これは最低賃金の履行確保に係る監督や、賃金不払いなどに係る申告監督など、一部のものに限られます。

※ インターネットの情報では、「原則として予告する」としている記事がありますが、厚生労働省のホームページにあるように、「原則として予告しない」ことになっています。

◆]働条件、安全衛生の両面から、総合的に調査する

監督官の任務は、労働者の労働条件及び安全と健康を確保することですので、労働条件、安全衛生管理に関する全ての事項が臨検監督の対象になります。

事務作業のみを行っている事業場についても、労働条件とともに、健康管理やメンタルヘルス対策などの安全衛生管理は重要な調査対象項目です。

 行政指導、行政命令は文書で行う

監督官が行政指導又は行政命令(使用停止命令等)を行う場合、文書を交付することによって行われます。

(2)交付される文書

行政指導、行政命令に関し、監督官から交付される文書の種類は次のとおりです。

 \Ю鬼告書

労働基準法、労働安全衛生法などについて、法違反がある場合、違反条文、違反内容、是正期日等が記載されます(資料2参照)。是正勧告書は、法違反があったという事実を確認する文書です。

例 有機溶剤を使用した塗装作業を行う労働者に6月ごとに1回定期に健康診断を実施していないこと

是正期日:平成○○年○月○日

◆〇愼撹

法違反ではないが、改善することが望ましい事項などが記載されます。是正期日の記載はありませんが、報告期日は指定されます。

 使用停止等命令書

使用停止等命令は労働安全衛生法等の違反のうち労働災害発生の急迫した危険があるものに対して、労働基準監督署長名で交付される行政処分です。使用停止命令、作業停止命令、設備等の変更命令などがあります。命令に従わない場合は送検処分の対象になります。

処分に不服がある場合は、行政不服審査法による審査請求をすることができます。

ポイント

使用停止等命令書を交付されたということは、いつ労働災害が発生してもおかしくない状態にあるということです。指定された期限等を厳守することは当然ですが、期限内であっても法違反が原因で労働災害が発生した場合送検処分となることがあります。早急に対処することが必要です。


6 臨検監督の想定事例について

臨検監督を想定して、調査項目やチェックポイントなどを説明します。これは、一つの例で、実際の調査手順は監督官によって異なります。

業務内容、労働者数(正社員、パートタイマ労働者、派遣労働者など)、労働時間制度(所定労働時間、交替勤務の有無等)などの聞き取りから始め、具体的な調査に入っていきます。

(1)共通事項(主なもの)

労働者名簿、賃金台帳など備え付けるべき書類、36協定、健康診断結果報告(一般健康診断、特殊健康診断)、労働者死傷病報告、労働安全衛生法第88条に基づく計画届などの届出・報告及び時間外労働の記録などを確認します。

ポイント

過重労働対策の観点から、時間外労働の記録はとても重要です。36協定の限度時間を超えないようにするための管理や、健康管理等について、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に則った管理が求められます。

また、要求された書類がすぐに出せないようでは、書類の保存が適切でないと判断されますので、日頃からすぐに取り出せるように管理してください。

(2)労働安全衛生関係(机上での確認)

ア 安全衛生管理体制の確認

労働安全衛生管理体制は、安全衛生管理のベースになりますので、重要なチェックポイントです。各管理者が選任されているだけでなく、活動が適切に行われていることが重要です。

ポイント

安全管理者、衛生管理者、産業医の職場巡視

衛生管理者は1週間に1回以上、産業医は1ヶ月に1回以上の巡視が義務づけられていますが、定期的な巡視ができていない例が多くみられます。

衛生管理者については、巡視日を決め、指示事項や改善状況の記録を行うようにする、産業医については、安全衛生委員会の開催日に職場巡視を行い、巡視の後に安全衛生委員会への出席と改善事項の指示等を行ってもらうようにするなどの工夫が必要です。

人事異動に伴う衛生管理者の選任

安全管理者等の活動を机上の記録だけで判断することは困難ですが、現場の状況を見れば、一目瞭然です。監督官が活動記録の確認に時間をかけることは少ないと思います。現場を見れば活動状況が判るからです。

衛生管理者は、衛生管理者免許が必要ですが、前任者が人事異動などで他の部署に異動し、その補充ができていない例が少なくありません。あらかじめ、後任者に免許を取得させるか、それができない場合は新たに免許所有者を雇い入れることが必要になります。

イ 安全衛生委員会等の活動状況の確認

安全衛生委員会等は、労働者の意見を事業場の安全衛生管理に反映するために設けられているものですが、活動が形式的で、実効を伴っていないことが少なくありません。

多く見られる問題点は次の点です。

・労使同数で構成されていない(労働者の意見が適切に反映されない)

・毎月1回以上定期に開催されていない

・産業医が構成員に含まれていない

・リスクアセスメントに関する事項など、法定の項目について協議されていない

ポイント

安全衛生委員会の活動は、労使双方の安全衛生意識を向上させるために重要な活動ですが、実態は、議題が連絡事項のみで、安全衛生管理の向上に係る事項の検討が行われていない例が少なくありません。委員は多忙な業務の時間を割いて、会議に出席しているわけですから、何らかの成果がないと熱意を持って委員会活動を継続することができません。

リスクアセスメントの実施や「働くひとの健康づくり」、受動喫煙対策など、効果が出やすい活動を継続的な議題にするなどの工夫が必要です。

ウ 災害発生状況と再発防止対策の確認

労働者死傷病報告をもとに、災害の発生状況と再発防止対策を確認します。これによって安全衛生委員会の活動状況がわかりますし、現場を調査する際の予備知識にもなります。

エ 危険業務・有害業務の管理状況の確認

クレーン、フォークリフトなどの免許・技能講習、有機溶剤、プレス機械の作業主任者の選任状況を確認します。

ポイント

免許・技能講習などの資格者や作業主任者については、交替勤務を行っていれば、各直ごとに資格者が必要です。有給休暇を取得することもありますので、それらを配慮した人員配置が必要になります。この点を考慮しないと、特定の労働者に業務が集中し、長時間労働の原因になることがあります。

オ 作業環境測定結果と結果に応じた改善措置の実施状況

作業環境測定が義務づけられている作業場所について、測定記録により実施状況と評価結果を確認します。単に、法違反の有無を確認するだけなく、有害性の高い作業場所を知り、重点的に調査を行う場所の見極めをするためです。

ポイント

作業環境測定を実施すると結果が3段階(第1〜第3管理区分)で評価されます。第3管理区分の場合は設備等の点検と改善が義務づけられます(第2管理区分の場合は努力義務)。測定は行ったが、評価結果に基づく対策を行っていない例が少なくありません。

測定結果の評価と対策については、測定を実施した機関又は労働衛生コンサルタントにお問い合わせください。

(3)労働安全衛生関係(現場における確認)

現場における調査は、事業場における安全衛生管理の実態を知る上で最も重要です。時間的な制約はありますが、事業場の隅から隅まで確認するのが基本です。

有機溶剤による塗装作業の例

確認する事項

有機溶剤業務の種類、使用している有機溶剤の種類及び表示の有無、作業主任者の氏名・職務の掲示などを確認します。

・局所排気装置等の性能

吹き付け塗装作業では局所排気装置又なプッシュプル型換気装置の設置が義務づけられています。局所排気装置等は、定期点検を行って常に必要な性能(一定の風速で、一様に吸引すること)を保持しなければなりません。性能は簡易な器具(スモークテスター)で確認することができます。


ポイント

塗装作業には、塗料の調合、塗装面の洗浄、塗装した製品の乾燥(自然乾燥又は乾燥設備による乾燥)、スプレーガンの洗浄等の有機溶剤作業が付帯します。塗装作業に関する対策はできていても、付帯作業に関する対策ができていない場合が多いので、注意が必要です。

また、塗装に使用されるトルエン、キシレン等は可燃性の有機溶剤です。乾燥に使用する赤外線ランプやスプレーガン等に生じた静電気が点火源になって引火することもありますので、火災・爆発対策が必要です。

長時間労働の例

労働時間の記録を確認した結果、長時間労働(1ヶ月45時間を超える時間外・休日労働)が認められた場合は、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に規定されている事項の確認を行います。

確認する事項

・36協定の限度時間を超えていないか

・健康診断の実施とその結果に基づく医師からの意見聴取

・1か月100時間を超えて時間外労働をさせた労働者などに対する医師による面接指導の実施

ポイント

医師による面接指導は「労働者の申し出による」こととされていますが、社内基準を設けて対象者全員に面接指導を行う、又は労働者に法律の趣旨を説明し、申し出を勧奨するなどの積極的対応が必要です。

7 企業が指導等を受けた後の流れと対応

(1)是正勧告書を交付された場合

是正勧告書には、「所定期日までに是正されない場合は送検手続をとることがあります」と記載されています。

労働基準法、労働安全衛生法の多くの条文は罰則が付いています。法違反があれば監督官は書類又は身柄を検察庁に送ることができます。

前に述べましたように、是正勧告書は法違反が存在するという事実を記載した文書ですので、使用停止命令書と異なり、「期日までに是正しなかった」ことによって処罰されることはありませんが、”法違反という事実” によって処罰されることがあるものです。決して軽く見てはいけません。

ポイント

労働基準法や労働安全衛生法などで送検処分となった例は平成24年において1,133件で臨検監督実施数の100分の1以下です。すなわち、多くの法違反は是正勧告書の交付と是正報告によって処理され、送検に至るものは社会の遵法意識に重大影響を与えると判断された、”悪質”な事案に限られています。

”悪質”と判断されることのないように、所定期日までに是正することが重要ですが、期日までに是正できない場合は、必ず期日前に担当監督官に理由を説明し、いつまでに是正するかを説明し、了解を得てください。正当な理由があり、延期する期間が妥当であれば、了解が得られるはずです。

(2)使用停止等命令書を交付された場合

使用停止等命令は、労働安全衛生法第119条第3号の規定により、”命令に違反した”という事実によって処罰の対象になります。当然、違反の内容によっても処罰の対象になります。命令を受けた場合は、次のことに留意してください。

 ヾ篤調韻北仁瓩梁仂櫃鮑導稜Г靴討ださい。特に同種の機械・設備が複数有る場合は、念を入れて確認してください。

◆〇藩冂篁潴仁瓠∈邏板篁潴仁瓩鮗けた場合は、速やかに作業者にその旨連絡し、「使用禁止」等の表示を行い、分電盤に鍵をかける等の措置を行い、作業者が誤って動作させることがないようにしてください。

 監督官に改善の方法を確認してください。監督官の目的は、法令に適合するように改善させることであるので、改善の方法については丁寧に説明してくれます。

ぁ_善を進めていく過程で不明な点がある場合は、遠慮なく質問してください。担当監督官だけで判断できない場合は、上司や上部機関などに確認の上、適切な改善方法を示してくれます。

Α_善が完了した場合は、写真等を添えて速やかに報告を行ってください。監督官が是正を確認した場合は、使用停止等命令解除通知が交付されます。解除通知が交付されるまでの間は、自己判断で使用を再開することは厳禁です。

ポイント

監督官は改善の方向性については指導してくれますが、改善にかかる費用や、作業効率の判断は事業場が行う必要があります。費用がかかりすぎて、経営を圧迫するようでは困りますし、作業効率が悪ければせっかくの装置も使用されないようになってしまいます。

設置費用や、作業効率を考慮した設備改善については、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントの活用をおすすめ致します。詳細は一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会(連絡先を文末に記載)又は都道府県支部にお問い合わせください。

7 安全衛生に関する企業のあるべき姿勢

事業場にとって、監督官による臨検監督等はできれば受けたくないものかもしれません。しかし、監督官は全国各地で勤務し、臨検監督や労働者からの申告の処理、悲惨な労働災害現場の調査など、事業場の安全衛生担当者ができないような様々な経験をしてきています。臨検監督等の機会に、監督官の安全衛生管理の考え方を理解し、事業場の安全衛生管理に反映させていただきたいと考えます。

最後に、私の安全衛生管理に関する考え方を述べさせていただきます。私が安全衛生管理を指導する場合に重視していることが二つあります。

一つは、事業場で起こっているどんな小さな現象も見逃さないことです。安全衛生管理のほころびは、最初に労働者の小さな不安全行動や設備の小さな欠陥に現れます。大きな問題に発展する前に見つけ出して対策を講ずることが重要です。

二つ目は、経営者に安全第一を貫く覚悟を持ってもらうことです。多くの監督官が、経営トップの考え方次第でその事業場の安全衛生水準が決まるという経験を持っています。

1906年にアメリカのUSスチールという製鉄所で初めて取り組まれた安全第一の活動が成果を上げたのは、経営者が品質や生産よりも労働者の安全と健康を優先するという明確な覚悟を示したからです。いま、”過労死”と呼ばれる過重労働による健康障害が社会的問題になり、”ブラック企業”に関心が集まっています。労働者の安全と健康に配慮しない企業は社会的に存在できなくなってきています。「経営者が明確な覚悟を持って、安全第一を貫くこと」これこそが、求められている企業の姿勢であると思います。

参考

一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会

ホームページ:http://www.jashcon.or.jp/